映画業界で受け入れられ外国出身のタレントたち

【出典】2018/2//22
http://variety.com/2018/film/awards/hollywood-immigrants-get-the-job-done-1202706915/

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ハリウッドの映画業界を考える際、アメリカ以外で産まれた人たちの貢献を考えないことは不可能だ。多文化共生の概念は映画業界に長く受け入れられ、最近では様々な人種の人を受け入れようという動きが広がり、数々の映画祭、特にアカデミー賞で多くの人種を見ることが当たり前になった。2017年に制作された素晴らしい映画を作ったフィルムメーカーたちの名前を見れば、多くの賞にノミネートされた外国出身のアーティストたちがいることがわかる。

「私は映画とテレビドラマをアートとして見ている。そしてアートは国境と国籍を越えると信じている。」とDDA Talentの社長のBill Dispoto氏は語った。「ビジネスはそこにこそあるのだ。良いビジネスマンは才能のある人をチームに入れることが成功の秘訣だと知っている。映画やテレビシリーズを制作するには経験豊かなアーティストと職人たちのとてつもない労力を必要とする。ビジネス的に見ても、外国出身のタレントに投資することは理にかなっている。」と同氏は続けた。

1928年の8月22日のバラエティー紙の記事  “30ヶ国からのタレント”には 「外国出身で、スタジオで働き、活動的にハリウッドで映画を制作している人は全体で189人:15人はプロデューサーか重役、36人は監督、14人は脚本家、7人は技術系、78人は俳優、39人は女優で、ハワイを除くと27ヶ国を代表していた。」 と書かれている。そしてほぼ1世紀近くに渡って、業界の進歩的な “門戸開放” の政策は、才能、意欲、熱意のある者は誰でも彼らの夢を叶えることができると気付かされる。

「ドアを常にオープンにしておくことは我々にとってとても重要だ。」とアメリカ大手エージェンシー、ユナイテッド・タレント・エージェンシー(UTA)のリック・クルベック氏は語った。「国際的な脚本家と監督はかなり独特のスタイルを持っていて、しかもアメリカの評論家と観客から評価されている。世界からのアーティストたち(俳優や技術系の人々も含む)の影響力と参加がなかったら、私たちの業界は今頃停滞していたことだろう。」と続けた。

去年、UTAは大胆なことをした。UTAの声明によると、伝統的なオスカーのパーティーをキャンセルし、「クリエィティブなコミュニティがアメリカ国内の移民排斥感情に関心を持っているということを示すため」に25万ドルもの金額をアメリカ自由人権協会と国際救済委員会(IRC)に寄付したのだ。

「エージェンシーとして、我々のクライアントであるイラン出身 のアスガル・ファルハーディー監督(『セールスマン』で第89回アカデミー賞外国語映画賞を受賞。抗議のためアカデミー賞授賞式を欠席)にも影響した、トランプ政権の入国制限令への対抗として、去年この決定を下したことに誇りを持っている。」と述べた。

今年はギレルモ・デル・トロ監督(メキシコ出身)とクリストファー・ノーラン監督(イギリス出身)がオスカー像を家に持ち帰る有力候補だ。デル・トロ監督の詩的でエモーショナルな作品『シェイプ・オブ・ウォーター』は彼のキャリアの中で一番の好評を持って迎えられている。ノーラン監督はヒット作を連発し(『ダークナイト』トリロジー、『インセプション』『インターステラー』など)、批評家からも好評だ。

チャンスが与えられた時、素晴らしい才能がある人は見つけてもらえるものだ。

「世界中からの優秀なタレントを長年代理してきたエージェンシーとして、将来性のあるクライアントの評価は平等に行う。- どこで産まれたかではなく、彼らの代表作を見て、ユニークな視点を持っているか、彼らのキャリアに良い影響を及ぼす見込みがあるかを判断するのです。」と大手エージェンシー、Sandra Marsh & Associates の社長のロコ・ヒンドマン 氏は語った。同氏はオスカーにノミネートされた経験のある撮影監督のダン・ローステン(『シェイプ・オブ・ウォーター』・『クリムゾン・ピーク』等を撮影)など多くのトップ・アーティストたちを代理している。「印象的な作品はたいてい国境を超えることが出来る。」と述べた。

業界にクリエイティブなインパクトを与えることが出来るタレントを探すことはチャレンジでもあり、報酬でもある。「私たちは時間をかけてユニークな世界観と、強くてオリジナリティを持ったアーティストを探している。」とUTAのクルベック氏は語った。 「国際的なコミュニティはそのために最適な場所なのだ。決まった一つのクロスオーバーのポテンシャルを持った映画制作や語り口のスタイルはない。私たちは最初から最後まで観客を熱狂させることのできる映画を作れる人と出会いたい。」と続けた。

俳優でコメディアンのクメイル・ナンジアニはパキスタンから18才の時にアメリカに移住し、妻であるエミリー・V・ゴードンと共に執筆した『ビッグ・シック ぼくたちの大いなる目ざめ』(彼らの出会いを描いた作品)の脚本はオスカーにノミネートされた。この脚本は彼らの実際の体験に基づいて書かれたので、ある程度の信憑性があり、他の誰にも書くことのできないユニークさがある。

アメリカ移民たちの人生経験が社会からの期待に挑戦するための人種の多様性の拡充に新たな面を追加することによって、彼らの芸術性を活気づけ初めているという確実な例だ。マーティン・マクドナー(イギリスとアイルランド両方の国籍をもつ)監督の『スリー・ビルボード』もアメリカの小さな田舎町を扱った映画で、アカデミー脚本賞にノミネートされた。往々にして、外国出身のアーティストたちは彼らのストーリーテリングの方向性を決める際に有利な位置にいる。なぜなら時として、彼らの “外人性”が思わぬ形でアメリカ社会全体を浮き彫りにするからだ。

「エンタメ業界の素晴らしいところは、毎日グローバル市場で働いているということだ。」とAgency for the Performing Arts(APA)のバイスプレジデントで同社のプロダクション部門の共同代表のMatt Birch氏は語った。「我々は世界中の全てのカテゴリーを代理しており、昔はプロダクションが世界のどこをベースにしていても、タレントを外国からわざわざ呼ばないといけなかったが、今はプロジェクトに応じてタレントをすぐに見つけることができる。」と述べた。

オスカーの俳優部門は大西洋から来た俳優が多く、ダニエル・デイ・ルイス(ポール・アンダーソン監督の『ファントム・スレッド』主演男優賞ノミネート);ゲイリー・オールドマン(ジョー・ライト監督の『ウィンストン・チャーチル/ヒトラーから世界を救った男』で主演男優賞ノミネート); ダニエル・カルーヤ(ジョーダン・ピール監督の『ゲット・アウト』で主演男優賞ノミネート; レスリー・マンヴィル 『ファントム・スレッド』助演女優賞;サリー・ホーキンス(『シェイプ・オブ・ウォーター』)は全員イギリス出身、シアーシャ・ローナンはアイルランド出身で、グレタ・ガーウィグ監督の『レディ・バード』に主演しノミネートされた ;オーストラリア人のマーゴット・ロビー(『アイ,トーニャ 史上最大のスキャンダル』に主演しノミネートされた)も忘れてはならない。

オスカーの主要5部門以外の賞は長年、外国生まれの人たちが輝ける場所となってきた。撮影監督賞にはデンマーク出身のローステンや、イギリス出身のロジャー・ディーキンス(『ブレードランナー 2049』)、フランス出身のブリュノ・デルボネル(『ウィンストン・チャーチル/ヒトラーから世界を救った男』)、スイス出身のホイテ・ヴァン・ホイテマ(『ダンケルク』)が今年ノミネートしている。作曲家でドイツ出身のハンス・ジマー(『ダンケルク』の音楽を担当)、フランス出身のアレクサンドル・デスプラ(『シェイプ・オブ・ウォーター』の音楽を担当)もそれぞれ作曲賞にノミネートしている。

「私はいつも外国出身者か、アメリカ人か関係なく、二つの重要な特性を持っている人を探している: 才能と堅実な労働倫理だ。」と 大手エージェンシーではないGSK TalentのIvana Savic氏は語った。「外国出身者は新しいアイデアとストーリーを語る方法を持ってきてくれる。非常に多くの場合、彼らの文化が人生の見方にユニークさをもたらし、さらに母国での経験が映像的に新鮮で驚くべきものとして映画に昇華されるのだ。」と述べた。