革新的なジャンル映画は今年のオスカーレースを引っ張る

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今年は珍しく「ジャンル映画」がオスカーに愛される、レアな年となるのだろうか?

確かに、今年の最優秀作品賞の多くがインディーフィルムのスピリットを持っていて、「ジャンル映画」のカテゴリーを超えている。そして映画を高める現代的な感性と重ね合わされている。

ホラーとコメディという、オスカーが特に嫌いな2つのジャンルを組み合わせた『ゲット・アウト』を考えてみよう。脚本兼監督のジョーダン・ピールは、この二つのジャンルを、人種という今最もホットな話題の1つに混ぜ込み、賞総なめ作品を作り上げた。

先に進む前に、用語を定義してみよう。言葉フランス語の「ジャンル」は芸術作品を分類しカテゴリ分けする方法を指すが、「ジャンル映画」というのは、キザな批評家達がが西部劇、SF映画、スポーツ物語、戦争物語、その他いくつかのカテゴリを呼ぶ軽蔑的な言葉だ。「まあ、これはただの西部劇だよ。」とは言わずにも、「これはジャンル映画だ。」といってしまうことで、ある映画を却下するようなものだ。

オスカーはSF映画やファンタジー映画にはほとんど賞賛しないが、ギリモ・デル・トロの心温まるモンスター映画『シェイプ・オブ・ウォーター』は、シンプルなSF映画の分類を超越する。この混合種間ロマンスと冷戦のスパイストーリーは、去年の秋に映画祭デビューして以来、賞賛され続けてきた。
このような作品はまだまだある。『ダンケルク』は戦争映画であり、革新的なストーリーテリング方法を使用して、一か八かのアクション作品を作り上げた。 『スリー・ビルボード』は復讐の話であるが、タフなヒロインと実は正しい心を持つ警官が対立するという設定だ。

このようなバリエーション豊かなジャンル映画は、伝統的なドラマ映画と、最後までギリギリの賞レースを行うだろう。

『君の名前で僕を呼んで』:これは 「同性愛」映画をアートハウスから、おそらく、主流に動かす。

『レディ・バード』:成人向けのジャンルは、オスカーの餌になることはなかった。

『ペンタゴン・ペーパーズ 最高機密文書』:『スポットライト』は別として、ジャーナリズム映画はめったに勝てない。

『ファントム・スレッド』:ディレクターとキャストの経歴にもかかわらず、結局はファッションとデザインに関する映画なのだ。

『ウィンストン・チャーチル/ヒトラーから世界を救った男』:オスカーは確かに伝記映画を愛する。 『ビューティフル・マインド』『ブレイブハート』『アラビアのロレンス』『ラストエンペラー』『ガンジー』そしてかなり昔の『エミール・ゾラの生涯』『巨星ジーグフェルド』など、最優秀作品賞は伝記映画で溢れている。

叙事詩でない限り、ジャンル映画は最優秀作品賞のお気に入りではなかった。 『風と共に去りぬ』(1939年)から『ロード・オブ・ザ・リング/王の帰還』(2003年)まで、長編物語は12回以上最優秀作品賞に選ばれた。ミュージカルは、『ブロードウェイ・メロディー』(1929年)『シカゴ』(2002年)、そして昨年惜しくも受賞を逃した『ラ・ラ・ランド』など、8回も受賞している。戦争映画は、『西部戦線異状なし』(1930年)から『ハート・ロッカー』(2008年)に至るまで、7つの最優秀作品賞を獲得した。その他のこととなると、アカデミーはジャンル映画に対して当たり前のように興味を示さなかった。

作品賞を受賞した純粋なアクション映画を挙げてみよう。最初の受賞作品であるサイレント映画『つばさ』(1927年)をアクション映画として数えない限り、何もない。

最優秀作品賞受賞者のこととなると、アカデミーは真面目なドラマ、特にベストセラーの本や長年続く演劇が映画化された作品、何と言っても実話に基づいたもの(過去10
受賞作品中5作品)を特に好む。

唯一のミステリー受賞作品はアルフレッド・ヒッチコックの『レベッカ』(1940年)だ。ホラー映画?ジョナサン・デミの「羊たちの沈黙」(1991年)をホラーとして数えるならば、それが一つだ。果たして『ゲット・アウト』が25世紀ぶりにオスカー像を獲得するホラー映画になるのだろうか?

その点では、何本のコメディ映画が受賞しただろうか? 『或る夜の出来事』(1934年)、『我が家の楽園』(1938年)、『アニー・ホール』(1977年)などのような作品以外を見つけるのは困難だろう。西部劇も同じである。 『シマロン』(1931年)、 『ダンス・ウィズ・ウルブズ』(1990年); 「許されざる者」(1992年)のみだ。

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ギャングや犯罪映画は、若干人気がある。『ゴッドファーザー』シリーズの初2作品(1972年と1974年)『ディパーテッド』(2006年) 『フレンチ・コネクション』(1971年)が受賞している。こじつけだが、『ノーカントリー』(2007年)も含められるかもしれない。スポーツ? 『ロッキー』(1976年)、『炎のランナー』(1981年)、『ミリオンダラー・ベイビー』(2004年)の他に受賞作品を探すのは難しいだろう。

あなたが俳優であれば、あなたがノミネートされたいジャンルは常に人気の伝記映画だ。ゲイリー・オールドマンがウィンストン・チャーチルを演じた『ウィンストン・チャーチル/ヒトラーから世界を救った男』は本命だ。2000年以来、10人の主演男優賞と8人の主演女優賞受賞者が実在の人物を演じた。助男優賞も助演女優賞も、それぞれ6人が実在の人物を演じて受賞した事は言うまでもない。その点では、『ペンタゴン・ペーパーズ 最高機密文書』で出版者のキャサリン・グラハムを演じたメリル・ストリープ、『アイ、トーニャ 史上最大のスキャンダル』でトーニャ・ハーディングとその母を演じるマーゴット・ロビーとアリソン・ ジャニー、そしてより一般的なドラマ映画『オール・ザ・マネー・イン・ザ・ワールド(原題)』でJ.ポール・ゲッティーを演じるクリストファー・プラマーが有力候補である。

ジャンル映画の監督らは、作品賞(クリント・イーストウッドの『ミリオンダラー・ベイビー』、マーティン・スコセッシの『ディパーテッド』)でなくても(『グラビティ』でアルフォンソ・キュアロンが監督賞)受賞履歴がある。

アカデミーがSF、アクション、ファンタジー映画に敬意を示す唯一のカテゴリが技術分野だ。興行収入の低い『ブレードランナー 2049』は、技術部門において5つ(ロジャー・ディキンズの驚くほど素晴らしいシネマトグラフィーを含む)にノミネートされていて、それは批評家に人気の作品『ビッグ・シック ぼくたちの大いなる目ざめ』(1つ)や興行収入チャンピオンである『ワンダーウーマン』(ノミネート無し)よりもはるかに多い。

今年のノミネートは、非常に多くの監督が個人的なビジョンを追求する機会を得ている。 『シェイプ・オブ・ウォーター』は、イギリスのインディペンデント映画の熱烈な支持者サリー・ホーキンス、アメリカのインディー映画の象徴マイケル・シャノン、そして前年のオスカー候補(オクタビア・スペンサーとリチャード・ジェンキンス)を使用しているので、他のSF映画と違い却下しづらい作品だ。『スリー・ビルボード』は果たしてただの犯罪復讐映画だろうか?そうかもしれない、しかし、この映画が描く悲しい人道と、人生との不安な戦いが、『ノー・カントリー』よりも『ムーンライト』寄りなのかもしれない。

今年のアカデミー賞は、ジャンル映画に有利になるだろうか?
こう言おう:ジャンル映画ということを忘れてしまうような、このような素晴らしい映画をこれから作ろう。