Apple、AR(拡張現実)の未来が携帯に備え付けられることに賭ける

【出典】 2017/8/7
https://www.wired.com/story/arkit-augmented-reality/

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Appleが現在提供しているARプラットフォームARKitで開発されたアプリを確認すると、AR(拡張現実)の革命はテープメジャーの分野でも起きるようだ。開発者がApple製品でARアプリを開発できるように提供されたARKitは、ポケモンGOのようにデジタル体験と現実世界を繋ぐことができるプラットフォームである。このプラットフォームで開発されたアプリは、iOS11がリリースされる9月にダウンロード可能となる。多くのARアプリは、家具が部屋にフィットするかを確認できるアプリや、自分のキッチンエリアのサイズを測れるなどといったものであり、Magic LeapやGoogle GlassといったAR端末と比べるとシンプルでつまらなく感じてしまうが、将来的に大きくなる可能性は充分にあるだろう。

Samsungで過去にARに関して研究を行っていたベンチャーキャピタリストのMatthew Miesnieks氏によると、ARKitの登場は「AR業界始まって以来最大の出来事」であるという。しかも、これは彼だけの意見ではないというのだ。ARを何百万ものiPhoneユーザーに普及させることにより、Appleは世界で最も強力なARアプリのプロバイダとなることができると考えられている。ARが一体どの媒体に適しているか、開発者がARKitを使い様々な開発を行うことにより明らかになるだろうと考えられている。

Appleは6月に開催された開発者向けカンファレンスでARKitを発表した。 ほとんどのARのデモと同様に、AppleはARがユーザーを仮想の世界に導き、iPhoneを「仮想世界へのレンズ」に変えることができると発表した。童謡「3びきのくま」の話が子供のベッドの上で見ることができるARのアプリや、レゴでバットウィング(バットマンの飛行艇)がコーヒーテーブルの上に現れる等、複数のアプリが発表された。基調講演では、Peter Jacksonの制作会社の代表が、iPadを使用してテーブル上で繰り広げられる宇宙戦争のデモを行った。

「自分の家のリビングルームで飛行船同士の戦いを見ることができたら、クールだと思いませんか」と代表は述べた。このような台詞は、AR関連の開発者に注目している人にとっては、よく聞く言葉かもしれない。Magic LeapのRony Abovitz氏は、ARを使えば「クジラが体育館の床からジャンプする」といった世界や「太陽系があなたの手のひらの上で見られる」といった世界が体験できると予見している。MicrosoftのAlex Kipman氏も、2016年のTEDカンファレンスで同様に「壮大」な言葉を使い新製品のHololensを披露した。彼は「このようなデバイスは我々の知覚を飛び越えた体験を提供してくれる」と述べている。

このような「壮大」な言葉で語られるARと違ったアプリが、ARKitを使って登場している。あるアプリは、新しいクッションがあなたのソファに似合うか映し出してくれたり、レストランでオーダーしたい料理が一体どんなものなのかテーブル上で確認できたりするアプリが登場しているのだ。様々な開発者が部屋をバーチャルな水で一杯にしたり、別次元に移動ができるワープをAR上で作ったりしているが、最も熱狂的な反応を生み出しているARはもっと別の代物である。@MadeWithARKitのある動画では、ARのテープメジャーで部屋を計測しているだけなのだが1.2万回以上の「いいね」を獲得している。

ARKitのアプリが他のARアプリと異なるのは、ARが持つテクノロジーとの可能性をさらに進化させるのではなく、一般の人々が日常的に抱える問題を解決しようとした点だろう。

成功したコンシューマーテクノロジーが、必ずしも壮大なアイディアから始まるとは限らない。1つの小さな問題を解決する方法として生まれ、壮大なアイディアに拡大していくこともあるのだ。フェイスブックは最初からデジタルメディアの覇権を得ようとしていたわけではない。最初は大学生同士が繋がることのできるツールとして始まったのだ。iPhoneも最初はMP3プレーヤーとして始まっている。しかし、そこから様々なサービスやiTunes、電話機能、インターネット、そしてアプリのストア等の方面で進化を遂げたのだ。

似たような現象がARにも起きているのかもしれない。ARKitがリリースされる前、最もARの実験として成功したのは、SnapchatのSpectaclesとポケモンGOであった(前者は単にSnapchatを体験する新しいレンズを提供しただけである)。Greylock PartnersのJosh Elman氏は「これらは普通のことを少し違うやり方、そして楽しみを加えただけ」であるという。「これらの試みは、失敗したGoogle Glassのように新しい世界を見せるものと比べると、おもちゃのようなものといっても過言はありません」と。

iPhoneがより控えめな選択技を作って媒体を再定義したのは、これが初めてではない。ビデオゲーム業界は、iPhoneがローコンセプトでカジュアルな「キャンディークラッシュ」や「アングリーバード」のようなゲームを世に送り出すまで、高価で複雑なコンソールゲームが業界を支配していた。

一部の人は、ARKitがMagic Leapのような壮大なARの世界に繋がる最初のステップと考えているようだ。Andreessen Horowitz’sのChris Dixon氏は、ARKitについて「完全なるVR/AR体験に向けての素晴らしい踏み石になる」とツイートしている。@MadeWithARKitのアカウントを運営しているSam Dauntesq氏も「ARはiPhoneの画面からメガネに移り変わるだろう」と予想しているようだ。Appleも彼に同意するかもしれない。同社は、長年ARKitが使えるメガネを開発していると噂されているからだ。Miesnieks氏によると「100%本当」とのこと。「私はそのプロトタイプのメガネを使ったことがある人と話したことがある」とも話している。Appleは、これに対しコメントを控えている。

そして最終的に、ARは最も野心的な提唱者が予測していた形になるのかもしれない。顔に常に装着し、今まで想像したこともない世界を見せてくれるようになるかもしれない。しかし、そこまでにたどり着くには、壮大なビジョンやびっくりするようなデモから始まるのではない。進歩は少しずつ始まり、一つ一つの問題を解決していかなければならないのだ。