広告業界で人工知能を使う倫理

【出典】2017/6/26

http://adage.com/article/digitalnext/ethics-ai-advertising/309535/

名称未設定

長年、広告業界は人間の行動を理解することに注力してきた。AI(人工知能)は、複雑で曖昧な情報を価値あるインサイトへ変換することを可能にし、個人分析が市場行動に導かれるようになった。20億人近くがフェイスブックを使い、2000億近いツイートが毎年ツイッターでシェアされ、Googleでは毎秒4万件近い検索がされている。すでに我々は、一個人から発信される言葉や写真、絵文字まで全てのソーシャルアクティビティを調べることが可能になった。

携帯からの位置情報やクレジットカードの取引情報、そして天気やニュースまで、機械学習とアルゴリズムが応用されれば、全ての消費者心理がを理解できるようになると考えられる。

これは間違いなく強力なツールであり、広告業界がその技術を敏速に採用することは誰も咎められないだろう。

しかし、AIは考慮すべき厄介な倫理的問題を抱えている。それは、広告主が我々個人について、我々以上に理解できてしまうことである。彼らは、人口統計的に我々を把握するだけではなく、我々の最も個人的な情報まで理解可能となるのだ。厄介なのは、今まで使われてきたテクノロジーをさらに高めてしまうかもしれない、ということだ。

そして、これらの懸念とは別に、広告にAIを導入することはさらに考慮しなければならない事項がいくつもある。それは、本質的に偏ったデータや間違った決定を下すアルゴリズム、そして個人のプライバシー侵害といった点である。

これらの理由から、マーケティングでAIを使用する場合、倫理規範が必要であり、透明性と信頼性を確保する必要があるのだ。

 システムの信頼性

個人への理解がより完璧に近づくほど、マーケティングの説得力は高まる。しかし、個人から得た新たなインサイトは、その個人だけでなく社会全体に対する道徳的義務について新たな疑問を提起するのだ。

例えば、AIを使ってスポーツカーに興味を持つ人々をターゲットすることは問題ないだろう。しかし、消費者が借金を抱えており、自己管理も不十分で、複数の違反行為を行っていて、薬物やアルコール乱用の履歴があることを事前に知ってしまった場合、どのように対処するべきなのだろうか。そのような消費者に対し、スポーツカーの宣伝をすることは問題ないと言えるのだろうか。

それぞれのケースに対し、道徳的に判断するのではなく、ガイドラインを作ってしまったほうが効率的であるだろう。透明性のあるシステムにより、消費者が無意味なマーケティングターゲットの対象になることなく、消費者とマーケティングがパートナー的関係にある方がより倫理的であると言える。

そのようなシステムを構築には、データ・アルゴリズム・消費者よる選択の自由と3つの側面を考える必要がある。

 データ

AIは、データがあって初めて機能する。膨大なデータがアルゴリズムを学習させシステムを維持することが可能となるのだ。もしそのデータが偏っていたり不正確であったりする場合、AIの意思決定にそのまま反映されてしまうのだ。

このようなデータは、そもそも人々の偏見が反映されてしまうことがある。MicrosoftのAIチャットボットTayは、差別的な発言をしてしまったが、これが最も悪名高いケースだろう。

 アルゴリズム

AIのエンジンには、未処理データをインサイトに変換するコードが備わっている。このコードは、AIがどのように動作すべきか指示するのだが、これは人間によってデザインされている。 つまり、これらの指示は「説明可能」でなければならないのだ。

これは、アルゴリズムの透明性と呼ばれているが、透明性を求めることは現実的ではない。なぜなら、AIの持つ知的財産の中で一番価値が高いのがアルゴリズムであり、そのコードをオープンに共有することは誰もしたがらないからだ。さらに、高性能な機械学習システムはブラックボックス化されており、特定の選択肢について道理的且つ適切に説明することはできないだろう。

 消費者による選択の自由

消費者は、どのような技術が使われマーケティングされているか知っているべきであり、そのようなキャンペーンに参加するかオプションが用意されるべきである。どんなキャンペーンを行う時も、消費者は正しい情報を得た上で選択するために、どのような取引が行われるか明確な説明を受けるべきなのである。どのようなことを提供しなければならず、見返りに何が得られるのか。さらに、その取引に対して不快に感じているのであれば、オプトアウトすることが可能であるべきなのである。

広告者は、倫理主義者ではない。しかし、彼らが与える社会的影響は、無視せず考慮すべきである。AIが一線を越える時は、やがてくるだろう。だからこそ、広告者はAIを広告にどのように取り入れるか最も良い手法を考えなければならない。そして、広告者が何を知っていても良いのか、知るべきなのか、または何を知ってはいけないのか、理解しなければならないと言えよう。