Oculus、より社会性を取り入れたバーチャルリアリティ体験へ

【出典】2015/5/25

http://www.engadget.com/2015/05/25/oculus-social-experience/

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バーチャルリアリティにより、小さくて黄色に光る蛍として映画のキャラクターになる体験をすることができるようになった。それは単なるバーチャルリアリティ体験とは異なり、隣で同じく頭にヘッドセットを着けている人と、真っ暗な部屋で共に体験することができるのだ。これこそがバーチャルリアリティ業界のPixarとも呼ばれるOculus Story Studioの、バーチャルリアリティをより社会的に交流できる体験にする取り組みへの第一歩と言えよう。今年の初めの Sundanceで発表された短編映画Lost を実験台として、Oculusはこのイノベーションに取り組んでいる。ゲームや映画に問わず、現時点でバーチャルリアリティは未だに全て個人個人の体験である。それをOculusが改善しようというのだ。

先日、私は今年の1月にデビューを飾ったLost Director’s Cutと呼ばれる本編を少し修正したバージョンの観賞会へお誘いを頂いた。そこで紹介された際立った特徴というのが、Story Studioチームが言う「共有経験」というものだ。この「共有経験」というのは、二人以上の利用者が共にOculusヘッドセットを装着し、同じ世界を同時に体験するというものなのだ。Lost Director’s Cutでこれを体験した時、私ともう一人の利用者は二人とも映画に出てくる蛍となり、隣で映画のワンシーンが流れている中、お互いを見たり、近寄ったりすることができたのだ。これは良い意味で、息をのむような不思議な体験であった。

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「バーチャルリアリティはとても孤独な世界です。ヘッドセットを装着した途端周囲を忘れ、周りの人々さえも忘れてしまいます」と、Story Studiosの技術監督であるMax Planck氏は述べた。「キャンプファイヤーを囲む雑談等、人々が体験後それをお互いに話し合いたくなるようなストーリーを提供したいのです」とも付け加えた。Planck氏と彼のチームの目標は、バーチャルリアリティの持つ偉大なる可能性を映画製作者達に伝えることであるらしい。そうすることによって、これからは単独の経験のみではなく、共有経験を作り上げることにも着目するようになる。現時点で社会性を取り入れたプロジェクトは一握りしかない。この一例としては、The Machine to be Anotherという性別を入れ替える体験が可能な美術実験が挙げられるだろう。

バーチャルリアリティ体験はその人を孤立させるものではなく、友達と一緒に体験しお互いに話し合って共に冒険していくようなものだとStory Studioのプロデューサーの一人であるEdward Saatchi氏は語る。「『どのようにしてバーチャルリアリティと映画を融合させるのだろう?映画には人が登場するし、もうすでに映画館や家のリビングで一緒に居るだろうに」といった質問が多々見受けられるが、我々はバーチャルリアリティの社会性を映画に取り入れようとしているのだ。同じ部屋に居るかもしれないし居ないかもしれない。こういったところで映画とMMOの線引きが曖昧となってくるのだ』と。

Oculusで開発されたSpatial Audioも、Lost Director’s Cutに大きく貢献している。Spatial Audio というのは、映画内の音をその発信源の方向から聞くことのできるサウンドエンジンなのだ。この一例として、映画の中で鳥が頭上を飛んでいく際に、その羽ばたく音が自分に向かって来るように聞こえ、背景へと消えて行くことが挙げられる。「多くの動きの要素(蛍、振動、手等)に音が対応しているため、目を閉じた状態でどこに発信源があるのかがわかるのだ」とPlanck氏はSpatial Audioについて説明した。「バーチャルリアリティは五感が重要な要素となっているため、見ている方向に伴って映像と音も対応しなければいけないのだ」と。

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とはいえ、Story Studioはこの種のテクノロジーを開発し始めただけに過ぎない。

それに、Lostの監督であるSaschka Unseldはバーチャルリアリティが非社会的なプラットフォームであることに問題はないと言う。「むしろそれにはそれで利点がある。例えば、自分一人の空間を作り上げることができるのだ。しかし、未だにどのようにして一つの映像を複数人で一度に見る事が可能なのかが気になるところではある」と。

さて、近々公開するStory Studio短編映画にこのような社会性は見られるのか?それは未だ明らかになってはいないが、可能性が無い訳ではない。「我々はLostという素晴らしいアイデアを思いついたからこそ、この映画で共有経験を試してみたのだ。よってこの先公開する映画も我々が興奮するような良いものでないとバーチャルリアリティ化する意味がない。共有経験を体験した上で新しいアイデアを考え上げている時に、Lostでの経験を思い出してもしかしたら役立てることがあるかもしれない」とPlanck氏は述べた。

 結局のところ、バーチャルリアリティをプラットフォームとして発展して行く過程を後押しするだけで、映画製作の中での主役といったものに発展させるのが我々の目的ではない、とSaatchi氏は強調した。「Story Studioは研究結果をすべて映画製作者達と共有する。我が社は2億ドルの大ヒット作品を生み出す訳ではない。ただ将来の映画製作者の情熱を増幅させることが我々にとって大切なことなのだ」と。